近視進行抑制治療
近視について
日本では現在「近視大国」と言われ、二人に一人が近視であると言われています。近視は目に入った光が網膜の前方にピントを結んでしまう状態で、眼球が前後方向に伸び、ピントの位置がずれることで生じる軸性近視と呼ばれるものがほとんどです。
これは主に小児期に進行し、軸性近視が進むと元に戻すことはできません。そのため、近視の進行を抑制するためには眼軸の伸びを抑えることが重要です。
軽度の近視は心配ありませんが、近視が進行して強度な近視になると黄斑変性症、網膜剥離、緑内障などの眼疾患に発展する可能性があり、視力障害の主要な原因となることがあります。
近視進行抑制治療のご紹介
低濃度アトロピン点眼
副交感神経抑制剤であるアトロピン点眼薬には眼軸の進展を抑制する効果があり、近視の進行を遅らせる薬としての効果が確認されています。このためアトロピン1%点眼を使用した近視治療は1960年代から試みられていますが、散瞳(瞳孔が拡がる状態)によるまぶしさ、目の調節機能(ピントを合わせる機能)の低下による読み書きの困難、アレルギー症状などの副作用があり、普及しませんでした。
近年、日本と同様に近視大国であるシンガポールの国立眼科センターから、1日1回の低濃度アトロピン点眼が軸性近視の進行抑制効果があるという報告が出されました。0.01%、0.025%という極めて低濃度のアトロピン点眼には副作用がほとんどないことが確認され、シンガポールでは製剤として販売され、臨床応用されています。
当院でも、この近視抑制用に製造された低濃度アトロピン点眼薬を輸入し、小児期の近視進行抑制治療を実施しております。
治療の効果と限界について
本治療は軸性近視の進行抑制を目的とするものであって、近視が全く進行しないというわけではありません。効果の判定には、白内障手術前に実施される眼軸長計測装置を用い眼軸長を計測します。この測定結果から、点眼作用による軸性近視の抑制効果が確認できれば、この治療を継続することになります。抑制効果が現れるのは点眼を使用している期間だけで、中止するとその効果は失われてしまいます。
また、万一副作用が発現した場合には、速やかに点眼を中止していただく必要があります。
近視進行抑制治療の対象
- 12歳以下の学童
- 中等度(-6D)以下の近視の方
- 3カ月毎の定期通院が可能な方
近視進行抑制治療に使用する点眼薬
- 0.01%アトロピン点眼薬 5 ml / 0.025%アトロピン点眼薬 5 ml
※本薬剤は、健康 保険適応外の未承認薬剤であり、シンガポールで製造された薬剤の輸入品となります - 使用方法:就寝前 両眼1日1回点眼(1カ月1本使い切り)
近視進行抑制治療の流れ
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STEP1
検査と診察
また、万一副作用が発現した場合には、速やかに点眼を中止していただく必要があります。
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STEP2
1ヶ月検診
検査、診察をします。
治療継続できる方には点眼処置となります。 -
STEP3
3ヶ月検診
3ヶ月毎に検査、診察のため受診いただき、点眼処置となります。
アトロピン点眼の価格表(税込み)
検査費用 | 3,500円 |
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低濃度アトロピン点眼薬(0.01%) | 4,000円/1本 |
低濃度アトロピン点眼薬(0.025%) | 4,500円/1本 |
オルソケラトロジー
コンタクトレンズを装用し、角膜(目の表面)を平坦化させることで一時的に近視を矯正する治療法です。
日中に裸眼で生活することを目的としており、就寝前にコンタクトレンズを装用し、起床後に外すというサイクルで治療を行います。
オルソケラトロジーは特殊なコンタクトレンズを使用するため、自費診療となります。
治療に適している方
- 日中裸眼で過ごしたい方
- スポーツをしている方
- 軽度から中等度の近視の方
- 屈折矯正治療を受けたいが、手術には抵抗のある方
子供でも使用が可能
文部科学省の統計によれば、スマートフォンやタブレットの普及で子供の近視が増加傾向にあります。
大人よりも子供の方が近視矯正効果を期待できる治療です。
適応年齢は原則20歳以上です。保護者のサポートがあれば6歳から治療が可能ですが、当院では10歳以上の方を推奨としております。
- 患者本人の十分な判断と同意を求めることが可能で、親権者の関与を必要としないという趣旨から、20歳以上を原則とする。
20歳未満は慎重処方とする。(オルソケラトロジーガイドラインより転載)
日中は裸眼で生活することが可能になり、QOLの向上が期待できる
コンタクトレンズや眼鏡のわずらわしさから解放されます。
ドライアイやゴロゴロ感が気になりがちなコンタクトレンズや、曇ったり汚れたりして付け外しの手間もかかる眼鏡のわずらわしさから解放されることは、人によってはメリットに繋がります。
手術の必要がない
裸眼で生活したいと思っても、ICL(アイシーエル)やLASIK(レーシック)などの手術治療は抵抗のある方もいらっしゃいます。
オルソケラトロジーは、就寝時にコンタクトレンズを装用するだけの治療で、装用を中止すれば2週間~1ヶ月程度で元の眼に戻ります。
注意事項
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コンタクトレンズの管理が必要
専用のケア用品でのお手入れが必須となりますので、未成年の方が使用する場合は保護者の方にレンズの管理をしていただきます。
ケアを怠りレンズを清潔に保てていない場合は、角膜炎・角膜上皮障害・角膜感染症・角膜内皮障害・巨大乳頭結膜炎などのリスクがあります。 -
矯正効果を安定させるまでに時間が必要
視力が安定するまで、日によって見えたり見えなかったりすることがあります。
開始直後は矯正効果時間が短く、夕方が近づくにつれて見えづらくなる場合がありますが、継続装用することで効果時間が長くなることも多いです。 -
費用は保険適応外
自費診療のため費用が高額です。1年~2年ごとにコンタクトレンズの交換や再作成が必要になる場合があります。
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診察医師について
当院では、オルソケラトロジー講習会を受講済みの医師が診察をおこなっております。
オルソケラトロジー価格表(税込み)
- 対象年齢10歳以上
1ヶ月プログラム費用 (含まれるもの:初回レンズ、初期ケアキット、1ヶ月目までの検査・診察料) |
片眼:70,000円 両眼:140,000円 |
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2ヶ月目以降の診察費用 | 5,500円 |
1年半後、レンズ再作成時費用 | 検査費:7,700円 レンズ費1枚:27,500円 |
オルソ作成後、1ヶ月目健診時にオルソ治療継続希望なしの場合は返金いたします。
- 一度、度数交換・破損交換していても30日以内はレンズ返品可能。返金時、オルソレンズをお持ちいただきます。
返金額 | 片眼:27,500円 両眼:55,000円 |
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処方交換 (度数やカーブ等の変更) |
1枚につき1回無料 (処方日より45日以内) |
紛失、破損時のレンズ費用 | 【紛失の場合】 1枚:27,500円 【破損の場合】 1回目:11,000円 2回目:27,500円 |
オルソケラトロジーによる近視治療に係る費用は医療費腔除の対象になります。
医療費腔除について
オルソケラトロジーによる近視治療に係る費用は医療費控除の対象になります。
オルソケラトロジーは自由診療となる治療法ですが、オルソケラトロジーによる近視治療に係る費用は、角膜を矯正して視力を回復させる治療対価として支払われるものなので、所得税法施行令207条に定められる「医師又は歯科医師による診療又は治療の対価」にあたります。
したがって、オルソケラトロジーにかかった費用も医療費控除の対象となります。